会社を辞めて妻と過ごす時間を増やしてみた

30歳、純日本的な一部上場企業を退職。一度人生をゆっくり考え直すために妻との長い夏休みをとってこれからの生き方について考えてみる。夫婦で行く旅の記録や、二人で過ごす時間を作るための働き方について日々感じたことを綴る記録です。

〜「情報介護」の必要性〜ESTAの申請代行に騙される親世代を心配して

情報弱者はいつだって損をする。

でも、今の時代はITの発展が目覚ましすぎて、ITリテラシーを身につける速度がどうしても時代に追いつかない人がたくさんいます。

 

こういった人達までをも、「情報弱者」と一括りにして、さも「遅れてる人」のように見下す姿勢は正しくないなと思います。

 

「情弱」という言葉が流行り出したのは私の認識では2000年代の後半くらいで、その頃はこの言葉が使われる対象といえば

ホットペッパーのクーポンだとかを使うと一瞬の手間でちょっとお得になる」ことを知らずにいる人、くらいだったような気がします。

もしくは、インターネット上で無料で見られたり、ダウンロードできたりする映画やら音楽やら(昔は規制や警告も今ほど厳しくなかった)を利用しない人なんかを、先んじてそこに到達している人がちょっと冗談交じりに蔑んでみたりする程度の可愛いものだったように思います。

 

しかし、2000年代からわずか10年ほどの間にもインターネットの世界は様変わりし、どちらかというとアンダーグラウンドで、オタク文化が強く、「全ての人がインターネットを扱えることが当然」という世の中ではなかったのが一変してしまっており、スマートフォンを媒介にネットを使うスキルは最早全ての人にとって必須と言える世の中になって来ています。

 

ただ、日本はご存知の通り最近は「超」が付くほどの高齢社会であり、30歳である私にはあまり実感できなくとも、齢60〜70の自分の親世代がこの社会で生きて行くことに悪戦苦闘しているのを見ると、彼らまでをも「情報弱者」と括り、色んなことができないことを「自業自得」と見捨て、手を差し伸べない社会はいけないのではないかと思います。

 

自分で言葉を作ってしまいますが、所謂「情報介護」みたいなものが必要になってくるのではないでしょうか?

 

最近は色んな登録をするにも全てネット経由。ネットを使えば便利、というレベルではなく、ネットを介することがむしろスタンダードであり、アナログな方法(窓口に行って書類を書いて手続きする)ことが愚かな時代に取り残されたやりかた、とでも言うべき社会と化しています。

パスワード管理の煩雑化など、自分でも実感する弊害みたいなのはありますが、こんなのは屁でもないレベル。

これを実感するのは、米国が渡航者に課す認証システムである「ESTA」の申請です。

 

タイトルにも書いた通り、この「ESTA」の申請時に詐欺まがいのサイトに引っ掛かり、高額な代行手数料を請求されるケースが身の回りでも起きています。

グアム、ハワイ、メジャーリーグにディズニーワールド、ラスベガスにニューヨークと、観光目的で米国に行かれる方は多いでしょう。

私も新婚旅行はアメリカ周遊でしたし、ハワイも好きで何度も遊びに行っています。

最近では妻の両親もお義父さんの定年退職を機に、ハワイ旅行が決定。

 

しかし、身の回りの全員がこの悪徳「ESTA申請代行サービス」に騙されています。

 

ESTAというシステム自体が何のことだか分かりづらく、とりあえずビザみたいなものという認識の方が多いことと思われますが、それ以上に問題なのは事前に「インターネットを通じて申請」しなければいけないという点。

「外国のもの」という時点で「何だかよくわからないもの」という拒否反応を示す人が多いこの日本において、これにさらに「インターネット」が加わるとアレルギー反応を起こす人が更に増加します。

 

このESTA、実は米国領事館のホームページからちゃんと入りさえすれば、全て中身は日本語に対応したサイトから簡単に登録が可能です。

申請料はわずか14ドルで、大した額ではありません。

 

しかし、「ESTA」で検索をかけると一番上から3つ目くらいまではこの「申請代行業者」のHPが表示されます。(これも問題だと思う。恐ろしい額の広告料払って検索のトップにいるんでしょう)

よく見ると検索画面に「広告」の表示があるので、この時点で本物のESTA申請サイトではないことに気づくこともできるのですが、まず分かりません。

更に、多くの代行業者のサイトが米国領事館の公式申請サイトのデザインを真似て作られており、ページ上部にはご丁寧にアメリカ合衆国の国旗である星条旗の画像を大きく掲げ、「ESTAとは米国が〜〜全ての渡航者はこのビザ免除プログラムを〜〜〜」などと尊大な文章を掲示し、あたかも公式の申請ルートであるかのような雰囲気を醸し出しています。

 

必要事項の入力はもちろん本物と同一。申請代行するにはそれしか要りませんから当たり前ですが、「詐欺まがい」と私が書いてしまうのは、

申請代行にかかる料金の説明が全くされず、ESTAの申請料である14ドルを支払うために入力したクレジットカードの決済で高額の申請代行料金が加算される

という点。

 

この価格設定がまた、7,000円くらいの絶妙な設定なのが嫌らしい。

そしてESTAの申請自体はきちんとされる。

 

ESTAの申請っていくらかお金かかるんだよね?くらいの認識の人はそもそも気付かない。

 

同世代である筈の妻がこれに引っかかってしまい、カードの明細を見て私が「何これ?」と聞くまでわからなかった時はびっくり。同じIT革命の時代を生きてきて、学生の頃から携帯電話をポチポチ、会社ではパソコンを触って仕事をしてきた30歳の女性でさえこれです。

妻の両親がハワイへ行くと聞いた時、二人して再三「ESTAの申請は偽物がいっぱいだから気をつけて」と忠告したにも関わらず、「これで合ってる?」と義母から送られてきたURLは案の定、代行サービスのサイト。

 

口々に言うのは、「だって検索して一番上に出てきたらそれが本物だと思うじゃん」

 

これを聞いて、「情弱」と蔑みますか?

 

申請代行サービス業者は、広告料を払ってグーグルやヤフーの検索のトップに表示されるよう図っており、申請代行自体もちゃんとやる。手数料がかかるのも当たり前。そこに違法性はないかもしれません。

 

しかし、あたかも「本物です」と言う顔をして検索結果の最上段に居座っている、初めて出会うものを「偽物だ」と見分けるのは難しい。

 

2ちゃんねる創始者であるひろゆきさんが「嘘を嘘であると見抜けない人が掲示板を使うのは難しい」と言っていましたが、あれは匿名掲示板の話。

一般化したインターネットの世界で、一般の人が通る道に落とし穴が引いてあるようなものです。

 

こうしたビジネスを許して良いのでしょうか?

私はいけないと思う。自分が70歳になった時に、変化して行く世界に同じようについていけるとは思わないから、こうした発想でお金を儲ける人達がいるのは怖い。

 

しかし、60代、70代とかになっても、こうしたことにチャレンジしなければ生きられない世の中がもう来てしまっているわけです。

 

そこで考えるのは、こうした悪徳業者は潰れればいい!という思いと、これからの時代は肉体的・精神的にだけではなく、情報の介護も必要なんじゃないかなということ。

高齢者向けのパソコン教室みたいなものは20年前からでも沢山あるけれど、目まぐるしく変化し続ける時代を生き抜く為のサバイバルスキルとしてのITリテラシーは、身につけろと言っても限度があるので、側について「介護」のような形でサポートしてくれる人がいないと無理なんじゃないかなと思います。

 

情報介護者という職が新しく生まれたりするかもしれませんね。

(もしかしたらそれはAIの方が適任かもしれませんが...)